オーストリア

Vienna, Austria, University of Business and Economics library and learning centre, exterior

記事

オーストリアは小さな国だが、文学の世界では大きな存在感を放っている。存命のノーベル賞受賞作家が2人(エルフリーデ・イェリネクとペーター・ハントケ)いることを誇る国はほとんどない。

インタビュー

ミレナ=美智子・フラッシャールは、日本のルーツを持つオーストリア人作家です。「引きこもり」や「孤独死」といった日本の社会現象をテーマにドイツ語で小説を書いています。インタビューでは、幼少期から現在までの二つの文化の間での生活を辿っています。

ブックフェア/文芸
フェスティバル

「Buch Wien」は1948年からウィーンで開催されているブックフェアであり、2008年からはウィーンの見本市会場で11月に実施されています。オーストリアの出版業界で最も重要なイベントの1つと考えられているこのブックフェアには、政治、文化、科学、ビジネスなど、多様な分野から500人を超えるドイツ語圏と世界の作家・専門家が参加して、数多くのステージディスカッション、パネルディスカッション、講演が行われます。

「Rund um die Burg」は、1992年から毎年5月に2日間にわたって開催されているウィーンの文学祭です。もともとのコンセプトはノンストップの朗読会です。何人もの作家が30分間隔で24時間途切れることなく自身の作品を朗読します。イベントは無料で、通常はブルク劇場とカフェ・ラントマンの間の大型テントや隣接する他の会場で行われます。

10月にはオーストリア最大の文学祭が図書館を中心に1週間にわたって催されます。来場者は、朗読、文学散歩、本のフリーマーケット、文学カフェ、さらには脱出ゲームまで、300を超えるイベントに参加できます。ワークショップに参加したり、古文書の読み方を学んだりする機会も用意されており、毎日行われるガイド付きツアーでは、国内最大の図書館の舞台裏を特別に見学できます。イベントは全国各地で開催されます。

「Salzburg Literature Festival(ザルツブルク文学祭)」は2008年から開催されています。5月の5日間、文芸を愛する者たちがザルツブルクへと誘われ、市内のさまざまな場所であらゆる表現形態の文学と出会います。小説の朗読、ノンフィクションについてのディスカッション、詩と音楽の相互参照では、アーティストと観客が一緒になって交流します。

「International Literature Festival(国際文学祭)」は、International Erich Fried Society(国際エーリッヒ・フリート協会)とLiteraturhaus Wien(ウィーン文学館)が主催しています。2004年以降、3月になると、朗読、講義、講演で社会政治関連の話題を扱う作家たちがヨーロッパ、海外、オーストリアからウィーンへと集まります。コミックから詩まで、あらゆる形態の文学が歓迎されます。政治詩人エーリッヒ・フリートに触発されたこのフェスティバルは、現代の問題に取り組み、国境を越えた交流を促進します。

文学賞

「Austrian Book Prize(オーストリア書籍賞)」は、連邦芸術・文化・公共サービス・スポーツ省が、Main Association of Austrian Book Trade(オーストリア出版業主協会)およびArbeitskammer Wien(ウィーン労働会議所)と共同で主催しています。コンペティションの目的は、オーストリア文学の質と独立を称えることです。この賞には多様なアワードが用意されています。第一に、オーストリアの作家による最も優れたドイツ語の純文学、随筆、詩的または演劇的作品が選ばれます。最優秀デビュー作や最終候補作のための賞も用意されています。賞金総額は4万5,000ユーロです。

「Grand Austrian State Prize(オーストリア国家大賞)」は、芸術的に特に優れたアーティストの生涯の作品に対してオーストリア共和国から贈られる最高の賞です。21人のメンバーから成るオーストリア芸術評議員会が、毎年原則的なローテーションを固定することなく、建築、視覚芸術、文学、音楽の分野のアーティストを国家大賞に推薦します。1950年から授与されているこの賞の現在の賞金は3万ユーロです。

1970年代半ばに始まったクラーゲンフルトの文学コンクールは、「47年グループ」の議論をモデルにしています。メインの賞はクラーゲンフルトの作家インゲボルク・バッハマンに因んで名付けられました。コンクールの一環として作家が未発表のテキストを審査員と聴衆の前で朗読し、その後審査員が作品を詳細に議論・評価します。2023年のインゲボルク・バッハマン賞では、州都であるクラーゲンフルト・アム・ヴェルターゼーの寄付により、2万5,000ユーロが贈られました。

翻訳賞

「Austrian State Prize for Literary Translation(オーストリア国家文芸翻訳賞)」は、連邦芸術・文化・公共サービス・スポーツ省によって毎年授与されます。文芸翻訳の分野における特別な業績を称える賞です。オーストリア文学の外国語への翻訳に贈られる国家賞と、外国語文学のドイツ語への翻訳に贈られる国家賞の2つの部門で毎年授与されています。各賞には1万ユーロが贈られ、授賞式はウィーン文学館で行われます。

文芸レジデンス

連邦首相府第4総局第5局の職務には、あらゆる文学分野の振興が含まれます。複数の奨学金で掲げられる目的として、すでに独立した出版物を持つ若い作家の文学プロジェクト(散文、詩、随筆)の仕事を後押しすることがあります。年間15件、それぞれ9,000ユーロの奨学金が授与されます。応募者はオーストリアの市民権を持っているか、居住地がオーストリアである必要があります。

「Great Literary Scholarships(大文学奨学金)」は、専門家から成る審査員の推薦に基づき、有望な文学プロジェクトに対して2年に一度チロル州から授与されています。奨学金としてそれぞれ1万5,000ユーロが支給されます。応募の呼びかけは、経歴や文学プロジェクトがチロルと密接に関わる、散文や詩の分野の作家に対して行われます。この奨学金の目的は、文学プロジェクトの作業に集中する機会を作家に与えることです。

Austrian Literary Society(オーストリア文学会)は2010年以来、オーストリアの作家がCasa Litterarumを利用できるようにしています。この建物はローマの南東約60キロのパリアーノの地所にあります。Casa Litterarumでの滞在費支援は、連邦芸術・文化・公共サービス・スポーツ省からの旅費助成金によって提供されます。Casa Litterarumは奨学金受給者が一度に1か月間利用することが可能で、BMKOESからの旅費助成金と結びついています。作家は少なくとも1点の出版物がある必要があり、提出されたプロジェクトがイタリアでのレジデンシーに正当な理由を与えるものである必要があります。

ウィーン市は文芸翻訳者に仕事と旅費の助成金を支給しています。この奨学金は、外国語の文学をドイツ語に翻訳するプロジェクトか、オーストリアで使用されている他の地域言語または少数言語への翻訳プロジェクトに授与されます。奨学金を受けることのできる候補者は、個人としてウィーンとつながりを持っている必要があります。候補者一人当たりの資金額は、翻訳者の仕事の質の向上に寄与するように計算されます。

2008年から、「H.C. Artmann/Writer-in-Residence(H.C. アルトマン/ライター・イン・レジデンス)」プログラムを通じて作家を招待し、ハンス・カール・アルトマンの作品に関わってもらいながら自身の執筆を進めてもらう取り組みが行われています。このプログラムでは、文学の拠点としてのザルツブルクにおけるネットワーク作りも促進されます。例えば朗読会で自身の作品を発表したり、同業者や学生と面会したり、文学館での無料イベントに参加したりすることが望まれると明示されています。

最近日本で出版された
タイトル

『インディゴ』

クレメンス・J・ゼッツ(著)
犬飼彩乃(訳)
国書刊行会(2021)

『野原』

ローベルト・ゼーターラー(著)
浅井晶子(訳)
新潮社(2022)

『ピアニスト』

エルフリーデ・イェリネク(著)
中込啓子(訳)
鳥影社(2021)