アイルランド

The Library of Trinity College Dublin, Dublin, Ireland, interior

記事

おそらく、まずはモダニズムとその遺産から話を始めるのがベストだろう。オスカー・ワイルド、ジェイムズ・ジョイス、W.B.イエイツ、サミュエル・ベケットらが作り上げた文学の伝統の中で執筆することは、現代アイルランドの作家にとってはなんとも複雑な宿命だ。これらの錚々たる名前は、列挙した順にまさにモダニズムそのものを体現している(1890年代の耽美主義から1950年代の不条理文学まで)。

インタビュー

ブックフェア/文芸
フェスティバル

ゴールウェイで開催される「Cúirt international Festival of Literature(Cúirt国際文学祭)」は、ヨーロッパでも指折りの歴史ある図書の祭典であり、国際的にもアイルランド全体でも文学の主要な代弁者となっています。読者と作家を集めて新たな視点を共有し、対話、討論、熟考のための場を創出します。新たな著述のための国際的なプラットフォームを提供し、読書に親しむアイルランド国民を育成するこの祭典は、毎年4月に新しいプログラムを立ち上げます。

「Writer’s Week(ライターズ・ウィーク)」は、ケリー県リストーウェルの町で5月から6月にかけて開催される文学と芸術の祭典です。あらゆるジャンルの著述を奨励し、幅広い読者が文学を楽しめる環境作りを目指しています。リストーウェルのライターズ・ウィークは、才気煥発な新しい才能を育成し、創作文芸ワークショップなどを通じて文壇に進出する機会を作家志望者に与えることを目的に、1970年に設立されました。

「Dalkey Book Festival(ダルキー・ブックフェスティバル)」は、アイルランドのダブリン県ダルキーで毎年6月に4日間開催される文学祭です。このフェスティバルは2010年に文学に焦点を当てて始まりましたが、今では演劇、映画、コメディなど、アート全般の祝祭となっています。さらには科学、テクノロジー、時事問題、新たな政治とグローバルトレンドの世界を探求する思想の祭典でもあります。

ジェイムズ・ジョイス・センターは1994年から「Bloomsday(ブルームの日)」の祭典を主催しています。「ブルームの日」は、ジェイムズ・ジョイスの小説「ユリシーズ」の主人公であるレオポルド・ブルームに因んで名付けられました。6月の祝典では、公演や朗読、再,現、小説に登場する場所の訪問、登場人物の扮装などが行われます。

1998年以来、「International Literature Festival Dublin(ILFD、ダブリン国際文学フェスティバル)」は作家、読者、出版社を招き、朗読、討論、上映、ガイド付き散策ツアー、イベント、ポッドキャスト、放送への参加を奨励します。あらゆる年齢層向けのイベントでは、小説およびノンフィクション作家、詩人、劇作家、脚本家の参加が歓迎されています。ダブリン国際文学フェスティバルは、ダブリン市議会のイニシアチブであり、アーツカウンシルが資金を提供して5月に開催されます。

文学賞

1971年にPatrick Kavanagh Society(パトリック・カヴァナー協会)によって創設された「Poetry Award(ポエトリーアワード)」は、アイルランド在住またはアイルランド系の新進詩人に授与されます。未出版の20首をまとめた詩集を表彰するこの賞は、幅広い詩的表現に耳を傾けることを目指しています。受賞作品の作家には、その功績を称えて2,000ユーロが贈られます。

An Post Irish Book Awards(アン・ポスト・アイルランド図書賞)」は、2007年にアイルランドの書店連合によって創設された一連の業界表彰賞です。受賞者は読者、図書館、書店によって毎年選ばれ、第4四半期の重要な販売期間にその年の最も優れた本が展示されます。候補作と受賞作のプロモーションは、アイルランド文学の読者を国内外に広げることを目的としています。表彰された作品は、授賞式の夕食会の場で祝われます。

1995年に創設された「Kerry Group Irish Fiction Award(ケリー・グループ・アイルランド小説賞)」は、アイルランドの作家を対象とする毎年恒例の賞です。受賞者はリストーウェルのライターズ・ウィークの開会式で発表されます。この賞の賞金として授与される2万ユーロは、アイルランドの作家だけが受賞できる小説の賞金として最も大きな金額です。

「Markievicz Award(マルキエビッチ賞)」は、議会に選出された最初の女性であるコンスタンツ・マルキエビッチを称えるために創設されました。観光・文化・芸術・スポーツ・メディア省を代表してアイルランドのアーツカウンシルが授与するこの賞は、公募を通じてアーツカウンシルが支援するあらゆる芸術ジャンルに携わる芸術家を対象としています。 賞金は2万5,000ユーロで、あらゆる経歴やジャンルのアーティストに支援が提供されます。

「KPMG Children’s Books Ireland Awards(KPMGアイルランド児童図書賞)」は、アイルランドで毎年開催される有力な児童図書賞です。1990年に創設されたこの賞は、アイルランドの作家と挿絵画家による子供のための優れた本を発見し、表彰し、奨励します。KPMGは2020年からこの賞を主催しており、賞金総額は1万6,000ユーロに上ります。

翻訳賞

2019年に設立された「Prix de Traduction du Centre Cultural Irlandais et de Literature Ireland」は、フランス語でのアイルランド文学の振興のために創設されました。3,000ユーロの賞金は、フランスではまだ知られていないアイルランド人作家の小説作品の翻訳者に贈られます。

アイルランド文学を国際的に普及させる組織である Literature Ireland は、日本のアイルランド文学の出版社を対象とした特別な助成金を発表しました。アイルランドの小説、児童文学、詩、劇、または文学的なノンフィクションの作品を出版する予定の出版社は、翻訳助成金に応募することができます(詳細は以下を参照してください)。申請が認可されると、翻訳された作品のデザイン、制作、宣伝に使用できる追加助成金を受け取ることができます。

1996年に創設された「Dublin International Literary Award(ダブリン国際文学賞)」は、この種の賞の中で最も重要な文学賞です。毎年発表される表彰作品は、世界中の都市の図書館から推薦されたものです。この賞では、単独の国際的な執筆作品または英語に翻訳された小説に対して10万ユーロが贈られます。翻訳作品が受賞した場合、賞金の10万ユーロは受賞作の著者に7万5,000ユーロ、翻訳者に2万5,000ユーロの割合で分配されます

「Prix des Ambassadeurs de la Francophonie(フランコフォニー大使賞)」は、フランコフォニーに関わる国の在アイルランド大使によって毎年授与されます。Literature Irelandがフランス大使館と連携して賞を調整し、受賞作品の翻訳者にレジデンシーを授与します。この賞は、作品が最近フランス語に翻訳されたアイルランドの作家を表彰します。

文芸レジデンス

「Heinrich Böll Association(ハインリヒ・ベル協会)」は、あらゆる分野の作家や芸術家をレジデンシーに招待し、静かで創造的な隠れ家を提供しています。ハインリヒ・ベル・コテージは、アイルランドのメイヨー県アキル島のダゴート村の外れにあります。「Achill Heinrich Böll Association(アキル・ハインリヒ・ベル協会)」は、この地で家族とともに休暇を過ごしたハインリヒ・ベルをしのんで創設されました。

「Tyrone Guthrie Centre(タイロン・ガスリー・センター)」は、アートの卓越と革新を促すために、アーティスト、デザイナー、ディレクター、評論家、翻訳家といった芸術部門で実績のある人々にレジデンシーの機会とワークスペースを提供します。応募者は個人または共同作業の一環として仕事をすることができます。世界中からの応募者のための国際的な料金体系が用意されています。

「Cill Rialaig Project」はDr.Noelle Campbell Sharpによって創設されたボランティア団体であり、アイルランド国内外の芸術家、詩人、作家、映像作家、作曲家のための隠れ家を開発・維持することを主な目的としています。Cill Rialaigの街には、7つのスタジオ、集会所、図書館、ユーティリティハウスがアーティストのために用意されており、自炊式の個別スタジオに住んで仕事をすることができます。

最近日本で出版された
タイトル

『ノーラ・ウェブスター』

コルム・トビーン(著)
栩木伸明(訳)
新潮社(2017)

『青い野を歩く』

クレア・キーガン(著)
岩本正恵(訳)
白水社(2009)

『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』

サリー・ルーニー(著)
山崎まどか(訳)
早川書房(2021)