ブルガリア

National Library Cyril and Methodius, Sofia, Bulgaria, exterior

記事

かつて旧東側共産主義諸国の一員であったブルガリアは、現在は東欧諸国のひとつと位置付けられている。旅行先としてはどちらかといえば人気のない国だ。ブルガリアと言えば昔共産主義だった国で、現在ではEU加盟国ではあるが生活水準が低い国、というイメージを抱いている人も世界に多い。

インタビュー

ブックフェア/文芸
フェスティバル

年間を通じてさまざまな時期に祝日が設けられ、全国的に祝われます。ブルガリアの有名な作家が称えられ、朗読会が開かれ、文学をテーマにしたさまざまなアクティビティが企画されて、ブルガリアの文学遺産や文化とのつながりが育まれます。祝日は年間を通じて設けられており、多くの場合文学者の誕生日や命日と重なります。

「Sofia International Book Fair(ソフィア国際ブックフェア)」は、通常12月にブルガリアのソフィアで開催されます。国内外の幅広い本と作家を紹介することに特化した有数の文学イベントです。書籍の発売、作家との集い、さまざまな文化プログラムなどが行われ、文学の交流と探求の拠点となっています。

毎年春にブルガリア各地で開催される「Spring Book Fair(春のブックフェア)」は、選び抜かれた多彩な文学を本の愛好家に提供します。本の紹介、著者のサイン会、ディスカッション、さまざまな文化イベントを通じて読書への愛を育みます。大切な伝統として長年にわたって祝われてきました。

このフェスティバルは毎年9月にプロヴディフ市で開催される文学イベントです。文学の祭典であり、朗読会、ディスカッション、さまざまな文化的アクティビティが目玉です。この包括性のおかげで、あらゆる立場の人々が集まって文学に関わることができるため、本好きにとって大切なイベントとなっています。独自の賞として、現代詩に贈られる「Orpheus Wreath of Excellence」賞と、最も優れた本のレイアウトに贈られる「Golden Brush」賞が用意されています。

ブルガリアのソフィアで開催される「Sofia Poetics Festival(ソフィア詩学フェスティバル)」は、詩と文学表現の祭典です。開催時期はさまざまで、詩の朗読、パフォーマンス、ワークショップ、ディスカッションなどが行われます。詩の芸術性を重視することで知られるフェスティバルには詩人や詩の愛好家が集い、情熱を分かち合います。

文学賞

1998年に創設されたこの賞は、文学と文化に多大な貢献をしたブルガリアの現代作家を称え、表彰します。推薦または作家が直接応募します。文学の専門家と評論家から成る審査員団によって受賞者が選ばれます。若い作家に賞状と5,000ブルガリアレフが贈られます。

1934年に創設された、ブルガリアで最も長い歴史を持つ文学賞の1つです。目的はブルガリア文学の優れた業績を表彰することです。通常は文学分野への多大な貢献に対してブルガリアの作家に授与されます。受賞者は文学の専門家と研究者から成る審査員によって選ばれます。賞金は2万ブルガリアレフです。

優れたブルガリア文学を称えるために1992年に創設された「Hristo G. Danov National Literary Award(フリスト・G・ダノフ全国文学賞)」は、国の文学遺産に多大な貢献をした作家に授与されます。受賞者は、文芸評論家や専門家から成る審査員団によって選ばれます。賞金は1万5,000ブルガリアレフです。

「Elias Canetti National Literary Award(エリアス・カネッティ全国文学賞)」は、ノーベル文学賞を受賞したエリアス・カネッティの遺志に沿い、文学に優れた貢献をしたブルガリアの作家またはブルガリア語への優れた翻訳に対して1992年から贈られています。現在の賞金は5,000ブルガリアレフです。

Union of Bulgarian Writers(ブルガリア作家組合)はヨーロッパで最も長い歴史を持つ作家団体です。110年にわたる活動の中で複数の自治体や民間投資家と協力し、多くの賞とコンクールを創設してきました。ブルガリア文学の詩人や古典作品に因んだ複数の賞を通じて、現代作家による最新の作品をブルガリア文学の伝統の中に位置付けます。短編小説、評論、散文、詩、詩集、文芸評論、歴史などで賞が贈られます。ほとんどの賞が異なるカテゴリーで授与されます。賞金額は賞によって異なります。

翻訳賞

National Book Center(国立図書センター)、国立文化宮殿およびCongress Center Sofia EAD(コングレスセンター・ソフィアEAD)の翻訳プログラムはコンテストプログラムであり、それぞれの言語に初めて翻訳されるブルガリアの現代作家と古典作家による小説とノンフィクション文学の出版を希望する、世界中の出版社が応募できます 。

ブルガリアの国立図書センター、「国立文化宮殿 – コングレスセンター・ソフィア」EADの文学賞である「Peroto」は、現代ブルガリア文学界の発展と外国語翻訳によるブルガリア文学の普及に貢献した作家、翻訳家、文学の専門家、研究者などの芸術家に毎年授与されます。2015年に創設されたこの賞は、Peroto Literary Club(Peroto文芸クラブ)に因んで名付けられました。このクラブは国立文化宮殿の文学的なシンボルとして、毎年授賞式を主催しています。

「Dora Gabe Translation Prize(Dora Gabe翻訳賞)」は、「Dora Gabe Literary Prize(Dora Gabe文学賞)」の一部です。Dora Gabeの生涯と文学作品に対する感謝の印として、2003年にドブリチ市議会が「Dora Gabe National Literary Award(Dora Gabe全国文学賞)」を創設しました。非競争のこの賞は、Dora Gabeのメッセージと国の文学への貢献の精神に基づき、重要な芸術的業績を挙げた作家に5年ごとに授与されます。

Elizabeth Kostova Foundation(エリザベス・コストヴァ財団)の「Krastan Dyankov Translation Award」は、文学的価値の高い現代小説の英語からブルガリア語への翻訳に対して授与されます。原本は1980年以降に発行された作品である必要があります。「Krastan Dyankov Translation Award」のWebサイトから、誰でも翻訳者を推薦できます。

文芸レジデンス

ソフィアのNext Page Foundation(ネクストページ財団)は、ブルガリア文学の文芸翻訳家と作家のためのレジデンシープログラムを提供しています。プログラムの対象は世界中の作家です。レジデンシー参加者はネクストページ財団が提供する専用のスタジオスペースや、財団のリソースとスタッフを利用することができ、生活費を賄う給付金も支給されます。
長期レジデンシープログラムでは、世界中のブルガリア文学翻訳者と、世界中の作家や詩人を受け入れています。期間は3週間から6週間です。短期滞在(最長1週間)は、ブルガリア文学と文学的コミュニケーションに関心のある世界中の編集者、著作権エージェント、出版社、文学マネージャー、ジャーナリスト、その他の専門家に適しています。

エリザベス・コストヴァ財団は、ブルガリアや他のヨーロッパ諸国の女性作家のために10日間のレジデンシーを提供しています。レジデンシーはロドピ山脈で行われ、作家たちがプロジェクトに取り組める静かで人目につかない場所が提供されます。レジデンシーには多くの場合ワークショップ、文学討論、文化的アクティビティが盛り込まれ、文学的探求と芸術的成長を後押しする環境が生み出されます。

「Radar Sofia」は非営利のレジデンシープログラムとして、世界とブルガリアの演劇製作者や作家にレジデンシーを提供しています。プログラムの目的は新しい作品に取り組む芸術家の支援です。レジデンシー参加者は「Radar Sofia」が提供する専用のスタジオスペースや、団体のリソースとスタッフを利用することができ、生活費を賄う給付金も支給されます。

最近日本で出版された
タイトル

『西欧の東』

ミロスラフ・ペンコフ(著)
藤井光(訳)
白水社(2018)

『バラの国の唄がきこえる』

ビリャナ・ストレムスカ(画と文)
ゆめある舎(2022)