リトアニア

Vilnius Mazydas National Library, Vilnius, Lithuania, interior

記事

本稿ではリトアニアの現代文学シーンを紹介すると共に、リトアニア現代詩の最も重要な視点と傾向を示していく。まず指摘しておきたいのは、強烈な影響力を伴う変化が始まったのは1990年のリトアニア独立以降だということだ。独立によって、認識面に重大な変化が生じた。世界に向かう動きが生まれたのだ。

インタビュー

詩人の永方佑樹は、リトアニア出身の詩人・映像作家ジョナス・メカスに影響を受け、詩をテキストのフォルムとしてだけではなく、〈行為〉としてとらえます。彼女のインタビューでは、つながりを維持するリトアニアの文芸シーンとの交流や、水等の自然物やデジタル等を詩的メディアとして使用し〈行為する〉、彼女の〈詩〉について語っています。

 

ブックフェア/文芸
フェスティバル

2000年にスタートした「Vilnius Book Fair(ビリニュス・ブックフェア)」は、毎年恒例のバルト三国最大のブックフェアであり、リトアニアの大型文化イベントの1つです。4日間のプログラムでは、一般の観衆と業界の専門家を対象に550を超えるイベントが催されます。新型コロナウイルス感染症の世界的流行が起こるまでは、作家によるトークショー、本の紹介、ディスカッション、映画上映、コンサート、展示、クリエイティブワークショップ、その他の文化的アクティビティを目当てに、国内外から毎年6万5,000人を超える来場者が訪れていました。主催はLithuanian Publishers’ Association(リトアニア出版社協会)、Lithuanian Exhibition and Congress Centre “Litexpo”(リトアニア展示会議センター「Litexpo」)、Lithuanian Culture Institute(リトアニア文化研究所)です。リトアニア共和国文化省がフェアを協賛しています。

国際的な文学フェスティバル「Children’s Book Island(子供の本の島)」は、子供と青少年のためのプログラム「Children’s Land(子供の国)」の一環です。プログラムの目的は、NGOであるSchool Improvement Center(学校改善センター)が主催する公式外の教育的・文化的アクティビティを通じて、文学への興味を刺激することです。この家族向けの文学フェスティバルでは、リトアニアと世界の作家による子供と若者のための最新の本が紹介され、作家・挿絵画家と来場者の出会いの場が設けられ、双方向型の朗読会、クリエイティブワークショップが行われ、文学作品に基づく演劇や映画が上演・上映されます。 フェスティバルはLithuanian Council for Culture(リトアニア文化協議会)による後援を受けています。

「Vilnius Pages(ビリニュス・ページズ)」は、評価が高く人気のあるリトアニアと世界の作家を称えます。重視されるのは、会合、ディスカッション、ディベート、作家による公開朗読ライブ、音楽と詩の即興、コンサート、展示、パフォーマンス、文学に基づく映画の上映などを通じて発生する、作家と読者の自然な対話です。イベントは市内のさまざまな場所で行われ、その多くが無料です。「ビリニュス・ページズ」は現代文学を一般的な読者に紹介し、魅力的で楽しい人気の娯楽にします。主催はAssociation for Reading Promotion and Cultural Literacy(読書推進・文化リテラシー協会)とLithuanian Writers‘ Union(リトアニア作家組合)です。

1965年に始まった毎年恒例のリトアニア最大の詩の祭典として、著名無名を問わず多くの詩人が参加する国際「Poetry Spring(詩の春)」フェスティバルでは、詩の朗読、トークショー、円卓会議など、100を超えるイベントが全国のさまざまな都市と町で催されます。 伝統、革新を問わず多彩な詩の表現を取り上げるこのフェスティバルは、さまざまな観衆と世代を魅了しています。毎年フェスティバルの年鑑が出版され、ビリニュス大学における伝統あるクロージングイベントでフェスティバルの受賞者が発表されます。

NGOの「Open Books(オープン・ブックス)」が2019年に立ち上げたこの文学フェスティバルでは、リトアニア語で出版された文学作品とその著者が紹介され、文学・文化の分野における話題の議論が交わされ、著名な外国人作家との集いが催されます。その年の多彩な文学作品を取り上げるこのフェスティバルには、フェスティバル主催者や審査員によって選ばれた作家が著名無名を問わず登場します。

文学賞

2005年から毎年開催されている「Book of the Year Awards(年間最優秀図書賞)」の目的は、あらゆる年齢層の読者に向けた良質な文学の創作・出版をリトアニアの作家と出版社に促し、あらゆる年齢と社会集団の国民に読書を奨励し、読書につながる環境を創出し、芸術的に価値ある文学をいつでも手に取れるようにすることです。Martynas Mažvydas National Library of Lithuania(マルティナス・マジュヴィダス国立図書館)とリトアニア共和国文化省が、リトアニア国営放送と共同で主催しています。全国の読者が投票する「Book of the Year(年間最優秀図書)」賞は、児童書、ティーンエイジャー向け図書、散文、詩、ノンフィクションの5部門で、専門の審査員が発表した候補作リストの中から選ばれます。受賞者は「ビリニュス・ブックフェア」で発表されます。

リトアニアの傑出した作家と詩人を記念し、その作品と文学の伝統をさらに深めて祝福するために、国と非政府機関によって多くの文学賞が創設されています。例えば、「Martynas Mažvydas(マルティナス・マジュヴィダス)」、「Maironis(マイロニス)」、「Antanas Baranauskas(アンタナス・バラナウスカス)」、「Juozas Tumas-Vaižgantas(ユオザス・トゥマス=ヴァイジュガンタス)」、「Lazdynų Pelėda」、「Vincas Krėvė(ヴィンツァス・クレヴェ)」、「Antanas Vaičiulaitis」、「Martynas Vainilaitis」、「Marius Katiliškis」、「Liudas Dovydėnas」、「Vladas Šlaitas」、「Jurga Ivanauskaitė(ユルガ・イヴァナウスカイテ)」、そして「Grigorijus Kanovičius」の各文学賞です。

この賞は、リトアニア国内および世界各地で活躍するリトアニア人クリエイターが過去5年間に創作した最も重要な文化・芸術作品を表彰するもので、文学作品や文学翻訳作品も含まれます。リトアニア最高の文化芸術賞として、毎年リトアニアの独立記念日である2月16日の前日に大統領から受賞者6人に授与されます。

翻訳賞

「Companion Prize(コンパニオン賞)」は、 Lithuanian Association of Literary Translators によって設立された賞で、評論家、ジャーナリスト、教育者、司書、言語学者、出版社のうち、前年に文芸翻訳および文芸翻訳分野への貢献に関して特に功績のあった団体または個人に贈られます。

「Translator of the Year Armchair(年間最優秀翻訳者アームチェア賞)」は、前年に行われたリトアニア語への小説と随筆の最も優れた翻訳に贈られる、毎年恒例の賞です。リトアニア共和国文化省が2001年に創設し、リトアニア・ペンセンターが主催するこの賞の目的は、リトアニア語への小説と随筆の最も優れた翻訳を後押しすることです。出版社、芸術家協会、NGO、その他の法人と自然人が候補者を推薦できます。応募者はリトアニア・ペンセンターの審査員によって選抜されます。

リトアニア文芸翻訳者協会は毎年、前年にリトアニア語で初出版された現代世界文学の最も優れた図書を、「Best Translated Books of the Year(年間最優秀翻訳図書)」として選定しています。マルティナス・マジュヴィダス国立図書館が提供する図書目録から書籍20点が選ばれます。この取り組みの目的は、重要な世界文学作品と読者、図書館、書店との出会いをサポートし、読書を奨励し、文芸翻訳者の仕事を後押しすることです。

毎年恒例の「St. Jerome Prize(聖ジェローム賞)」は2つの部門で授与されます。1つめは、過去3年間に行われたリトアニア語への最もプロフェッショナルで芸術的で熟練した翻訳に対して、文芸翻訳者に贈られます。2つめは、プロフェッショナルで熟練した外国語への翻訳と、海外におけるリトアニア文学の普及に対して、リトアニア文学の翻訳者に贈られます。候補者は、芸術家協会、創作団体、教育・文化機関、出版社、その他の法人または自然人によって推薦されます。「聖ジェローム賞」はLithuanian Association of Literary Translators(リトアニア文芸翻訳者協会)とリトアニア共和国文化省によって授与されます。

文芸レジデンス

2018年にユネスコの世界遺産であるニダに設立されたInternational Centre for Translators and Writers(ICTW、国際翻訳者作家センター)は、クライペダ郡イエバ・シモナイティテ公共図書館の一部門として、リトアニア国内外のクリエイター、翻訳者、作家が滞在して仕事に取り組める場所を提供します。国内外の文学の専門家が集い、執筆し、翻訳し、交流し、協力する場となっています。センターでは作家のために国際的なイベントを主催し、奨学金プログラムを運営し、クリエイティブキャンプを開催しています。年間を通じて応募が可能です。

「Vilnius Literary Residency(ビリニュス文学レジデンシー)」は、世界中の作家、挿絵画家、文芸翻訳者のためのプログラムです。このレジデンシープログラムでは、作家、挿絵画家、翻訳者が4週間ビリニュスに滞在してクリエイティブな仕事に取り組む機会が提供されます。選ばれた参加者には、旅費、ビリニュスの象徴であるウジュピス芸術地区での宿泊、500ユーロの奨学金が提供されます。ユネスコの文学都市プログラムは、2004年にスタートした広範な創造都市ネットワークの一部であり、現在は世界中の295のユネスコ創造都市で構成されています。

最近日本で出版された
タイトル

『シベリアの俳句』

ユルガ・ヴィレ(著)
リナ板垣(絵)
木村文(訳)
花伝社(2022)

『へびの王妃エグレ』

サロメーヤ・ネリス(著)
木村文(訳)
ふらんす堂(2022)