ポーランド

The University of Warsaw library garden (the botanical garden is on the roof of the library), Warsaw, Poland, exterior

記事

小説家オルガ・トカルチュク(1962-)が2018年のノーベル文学賞を受賞したことは記憶に新しい。1996年には詩人ヴィスワヴァ・シンボルスカ(1923-2012)が同賞を受賞した。世代もジャンルも異なるが、平明な言葉で書かれた両者の作品は、ポーランドでは幅広い読者に親しまれ、よく読まれている。

インタビュー

ポーランドの詩人クリスティーナ・ドンブロフスカは今年の京都文学レジデンシーのEUフェロー。四元康祐は長年ヨーロッパに拠点を置きながら、世界中の詩人たちと広く活発なネットワークを築いてきた日本の詩人です。

2024年のヨーロッパ文芸フェスティバルのイベントで二人が一緒に登壇し、自らの詩を朗読しながら、現代においての詩の可能性について語り合います。

イベントに先立ち二人がオンライントークで「俳句スピリット」をはじめ、お互いの詩作へのアプローチなどについて共有しました。

 

ブックフェア/文芸
フェスティバル

「Sopot by the Book Festival(ソポト・バイ・ザ・ブック・フェスティバル)」は、ソポト市とソポトの市立図書館が主催しています。毎年8月に主催者が1つの国を選び、その国の文学をフェスティバルのメインテーマに据えます。 フェスティバルでは、朗読、映画上映、ワークショップなど、多様な形で文学を紹介します。著者との集いとは別に、女性の権利、人新世、国民的同一性、人類の精神的状態について討論が行われます。

「Conrad Festival(コンラッド・フェスティバル)」は、2009年から毎年6月にクラクフで開催されている文学祭です。主催はTygodnik Powszechny Foundation(ティゴドニク・ポフシェフヌィ財団)とKraków Festival Office(クラクフ・フェスティバル・オフィス)です。フェスティバルには、文学だけでなく映画、演劇、音楽、視覚芸術を生み出す多様な文化と世界観を代表する世界中のアーティストが招かれます。

クラクフ・フェスティバル・オフィスは、ポーランドとヨーロッパで最も重要な文化イベントを主催するポーランドの有力な団体です。7月の数日間にわたるフェスティバルの目玉は、作家を囲んでの詩の鑑賞、デビュー作の紹介、コンサート、詩の朗読と論評です。詩人チェスワフ・ミウォシュに因んで名付けられたこのフェスティバルの目的は、詩の可能性と歴史を探求し、後押しすることです。

「Góry Literatury Festival(「文学の山々」フェスティバル)」は、オルガ・トカルチュクが主導して2015年に創設されました。ノヴァ・ルダの近くに住むこの作家は、7月に開催される文学と社会のユニークなイベントを立ち上げました。その主な目的は今も変わらず、住民の文化的・市民的活性化であり、文化教育であり、生態学や平等の権利、アイデンティティや言論の自由、ドイツとチェコとポーランドの文化遺産、国境を越えた協力、文化を通じた地域の持続可能な発展について、分析・議論することです。

「Found in Translation Gdańsk Literary Meetings(ファウンド・イン・トランスレーション・グダニスク文学ミーティング)」は、翻訳の技術に特化したユニークな文学祭です。4月にポーランド内外の著名な作家、翻訳家、文芸評論家が招かれて、文学と翻訳について語ります。このミーティングは文学を別の角度から見る可能性を提示します。ミーティングは2013年から2年ごとに開かれています。

文学賞

「Transatlantyk(トランスアトランティック賞)」は、Book Institute(書籍協会)が海外の著名なポーランド文学アンバサダーに毎年授与する賞です。翻訳家、出版社、評論家、あるいは文化的生活に活気を与えるあらゆる人材が受賞者となる可能性があります。この賞が始めて授与されたのは2005年、ユリウシュ・スウォヴァツキ劇場で開催されたConference of Polish Literature Translators(ポーランド文芸翻訳者会議)でのことでした。受賞者には1万ユーロに加えて、記念の賞状とウカシュ・キェフェルリンクがデザインした彫像が授与されます。

「Paszport Polityki(ポリティカのパスポート賞)」は、週刊誌であるPolityka(ポリティカ)誌が1993年から毎年発表しているポーランドの文化賞です。文学、映画、演劇、クラシック音楽、ポピュラー音楽、視覚芸術の6つの主要部門で授与されます。最も速い進歩を遂げ、新たな成果で人々を驚かせ、その活動が世界での支援と奨励に値するクリエイターに贈られる、栄誉の印と言える賞です。

「Nike Literary Award(ニケ文学賞)」はポーランドの作家が前年に発表した最も優れた文学作品を表彰する、毎年恒例のポーランドの文学賞です。1997年に創設され「Gazeta Wyborcza(選挙新聞)」紙が資金を提供するこの賞は、ノンフィクションの随筆や自伝を含むすべての文学ジャンルを対象としています。賞金の10万ズウォティに加えて、受賞者にはポーランドの著名な彫刻家カジミェシュ・グスタフ・ゼムワがデザインしたギリシャの女神ニケの彫像が贈られます。

「Wisława Szymborska Award(ヴィスワヴァ・シンボルスカ賞)」は、2つの部門で授与される国際的な賞です。賞の前年にもともとポーランド語で出版された最も優れた詩集に毎年授与される他、ポーランド語に翻訳された詩集に隔年で授与されます。賞として彫像と、財団理事会が定める額の賞金が贈られます。

「Kościelski Award(コシチェルスキ家賞)」はポーランドで最も長い歴史を持つ独立した文学賞です。1959年からジュネーヴで活動しているKościelski Foundation(コシチェルスキ財団)によって授与されます。ポーランド国内外の飛び抜けた文学愛好家や批評家で構成される審査員が、40歳未満の有望な作家に毎年1つ以上の賞を授与しています。財団によって贈られるこの栄誉の印は、国外では最高の常設ポーランド文学賞であり、文学的業績を示す信頼できる尺度であると考えられています。

翻訳賞

「Tadeusz Boy-Żeleński Translation Award(タデウシ・ボイ=ジェレニスキ翻訳賞)」は、外国文学をポーランド語に翻訳した翻訳者に2年ごとに贈られます。2013年にグダニスクのパベウ・アダモビッチ市長によって創設され、2015年に初めて発表されました。2017年に、生涯の翻訳業績に対する表彰と、特定作品の翻訳に対する表彰の、2つの部門に分かれました。受賞者には彫像とは別に5万ズウォティまたは3万ズウォティが贈られます。

Wisława Szymborska Foundation(ヴィスワヴァ・シンボルスカ財団)が主催する「Wisława Szymborska Award(ヴィスワヴァ・シンボルスカ賞)」は、ポーランド語の詩の作品だけでなく、ポーランド語に翻訳された詩集にも贈られます。賞の候補者は、版元、文化団体、文芸雑誌およびWebサイト、賞委員会のメンバー、その他の関係者によって提案されます。

文芸レジデンス

2006年以来、Kolegium Tłumaczy(翻訳者大学)はクラクフでポーランド文学の翻訳者グループのためにレジデンシーを主催しています。2019年からはワルシャワでも同様のプログラムを行っており、静かに翻訳作業や図書館研究、著者や専門家との会合を行える環境を提供しています。

「Kraków-Vilnius(クラクフ-ヴィリニュス)」レジデンシープログラムを主催するのは、ユネスコ文学都市であるクラクフです。このレジデンシーは、ユネスコ文学都市であるヴィリニュスの作家と翻訳者のための専用プログラムです。
クラクフ・フェスティバル・オフィスは、この街の文学的生活に参加する機会をレジデンシー参加者に提供し、彼らがポーランドで自身の作品を売り込む機会を創出できるように支援します。

ユネスコ文学都市のクラクフは、2017年から「ポリティカのパスポート賞」の文学部門のパートナーです。クラクフは毎年、クラクフでの1か月間のレジデンシーを受賞者に授与し、快適で平和な仕事のための環境を提供しています。クラクフの読者との集いや、会議、書店での朗読会、コンラッド・フェスティバルなどの文学祭に参加する機会でもあります。

前年の最も優れたデビュー作に授与される「Conrad Award(コンラッド賞)」は、クラクフのユネスコ文学都市デビューを支援する市のプログラムの一環であり、クラクフ市、クラクフ・フェスティバル・オフィス、書籍協会、ティゴドニク・ポフシェフヌィ財団による共同プロジェクトです。受賞者には彫像と賞金とは別に、クラクフの書籍協会のゲストルームにおける1か月間のレジデンシーが贈られます。

International Cities of Refuge Network(ICORN、国際難民都市ネットワーク)は2005年にノルウェーで設立され、作家や人権擁護活動家を庇護しています。このネットワークには、ポーランドの4都市、クラクフ、ヴロツワフ、グダニスク、カトヴィツェを含む約70の都市が含まれています。クラクフは中東欧で初めてICORNに加盟した都市であり、ICORNの作家たちがVilla Deciusで創作・文学活動を続けられるように安全な場所を提供しています。この別荘は長年にわたって作家にとって重要なレジデンスであり、人権と言論の自由について考える場所であり続けています。

最近日本で出版された
タイトル

『インヴィンシブル』

スタニスワフ・レム(著)
関口時正(訳)
国書刊行会(2021)

『瞬間』

ヴィスワヴァ・シンボルスカ(著)
沼野充義(訳)
未知谷(2022)

『独裁者の料理人 : 厨房から覗いた政権の舞台裏と食卓』

ヴィトルト・シャブウォフスキ(著)
芝田文乃(訳)
白水社(2023)