エストニア

National Library of Estonia, Talinn, Estonia, exterior

記事

数年前、アメリカとオーストラリアの研究者による調査で、エストニア人の蔵書数は世界平均のほぼ2倍に上ることが分かった。これは驚くに値しない。私たちにとって文学は、ほぼ半世紀にわたって祖国の代わりだった。祖国そのものがソ連の占領下にあり、私たちの言語と文化は常に脅威にさらされていたからだ。だから、エストニア人作家による新作は、2万5,000部から3万部出版されるや、あっという間に売り切れていた。エストニア語話者はおよそ100万人しかいないにもかかわらずである。読書は、一つの抵抗の形であったのだ。

インタビュー

ブックフェア/文芸
フェスティバル

「Baltic Book Fair(バルト諸国ブックフェア)」は、2月にバルト三国の首都タリン、ヴィリニュス、リガのいずれかで交互に開催されます。最初のフェアは1995年にタリンで開催されました。参加国の数が多く、毎年増加しているのが大きな特徴です。年に2度のこのフェアは、特にエストニア、ラトビア、リトアニアの情報センター、出版社、大手版元が参加します。

2004年から伝統的に5月の第1週にタルトゥで開催される「Tartu International Festival Prima Vista(タルトゥ国際フェスティバル・プリマヴィスタ)」では、さまざまな国の作家、芸術家、学者、文化愛好家を迎え、未来に関わる社会的な恐怖と希望を可能な限り多様な方法で読み解き、その意味を理解しようと努めます。学際的な文学祭として、芸術と批評の形で現代におけるユートピアとディストピアの意味を探求します。

国際的な文学祭「HeadRead」は、作家、出版社、翻訳者が主催してエストニアの首都タリンで5月に開催されます。世界中から作家を迎え、さまざまな作家の作品だけでなく、何よりも作家自身を知る機会を参加者に提供することに重点を置いています。この文学祭は12年にわたって開催されており、創作、ノンフィクションの枠を越えて演劇、映画、音楽と連携しています。

文学賞

「Romaanivõistlus」と呼ばれるエストニアの小説コンクールの伝統は、1927年に出版社のLoodus(「自然」の意)によって始められました。コンクールは不定期に開催され、エストニアの小説を評価する役割を果たしています。こうしたコンクールを主催する組織は、主に出版社や版元です。2014年には民間企業の支援を受けて、Eesti Kirjanike Liit(エストニア作家組合)によって小説コンクールが復興されました。「Estonian Writers’ Union Novel Competition(エストニア作家組合小説コンクール)」は毎年開催され、1万ユーロが授与されます。

「Estonian Science Fiction Award Stalker(エストニア・サイエンス・フィクション賞ストーカー)」は、その暦年にエストニア語で出版された最も優れたSF小説とコレクション、そして最も優れたオリジナルおよび翻訳小説を表彰します。賞金はなく、ファンのアンケートで決まる受賞者には賞状に加えて年によって異なる彫像が贈られます。

フリーデベルト・トゥクラスによって1970年に創設された「Friedeberg Tuglas Short Story Award(フリーデベルト・トゥクラス短編小説賞)」は、エストニアで最も継続的に授与されている歴史ある文学賞です。2つの賞があり、前年に出版された最も優れた短編小説を毎年表彰します。この賞は、受賞者のための特別出版と賞金から成ります。

1990年に創設された「Betti Alver Literary Prize(ベティ・アルヴェル文学賞)」は、エストニア文化基金の支援を受けて、Estonian Writers’ Union(エストニア作家組合)のタルトゥ支部によって授与されます。ベティ・アルヴェルの遺志に基づいて毎年授与されるこの賞は、詩や散文(小説)の優れたデビュー作を表彰します。現在の賞金額は2,000ユーロで、対応する賞状が付属します。

1970年に創設された「Cultural Endowment Prize(文化基金賞)」はもともとエストニアの作家Juhan Smuulに因んで名付けられ授与されたものでした。1995年からは、エストニア語翻訳、児童文学、青少年文学など、さまざまな部門における最も優れた文学作品を称える複数の賞が加わり、Cultural Endowment of Estonia(エストニア文化基金)によって授与されています。

文芸レジデンス

最近日本で出版された
タイトル

『マルテンス教授の旅立ち』

ヤーン・クロス(著)
藤野幸雄(訳)
勉誠出版(2000)

『蛇の言葉を話した男』

アンドルス・キヴィラフク(著)
関口涼子(訳)
河出書房新社(2021)